「ガテン系」とは何か?現場で作業着を汚しながら働く肉体労働者の筋肉と汗に興奮する

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工事現場で働く職人、使い込んだ作業着、短く刈った髪、日に焼けた肌。日本のゲイ文化では、こうした姿を思わせる男性が「ガテン系」と呼ばれ、昔から一つの人気タイプになっている。けれども、「ガテン系」は単に筋肉のある男性という意味ではない。そこには、体を使って働くこと、汗や汚れを気にせず仕事をすること、職人らしい無骨さといったイメージまで含まれている。だから、同じ筋肉質な男性でも、きれいに鍛えたモデル体型と、現場帰りの職人風の男性では、後者に強くひかれる人がいる。

しかも、この言葉の出発点はゲイ文化ではない。もともとは1990年代に創刊された一冊の求人誌だった。そこから約30年の間に、「仕事の種類」を表す言葉が、いつしか「好きな男のタイプ」を表す言葉へ変わっていったのである。

求人誌『ガテン』から「男のタイプ」へ

「ガテン」という言葉の元になったのは、リクルートが1991年に創刊した求人情報誌『ガテン』である。同誌では、建築、土木、ドライバー、整備、調理など、現場で技術や体力を使う仕事を中心に紹介していた。2009年に休刊したが、その誌名から生まれた「ガテン系」という言葉は今も残っている。つまり、本来の「ガテン系」は体形を表す言葉ではなく、「『ガテン』に載っていそうな仕事をしている人」という意味だった。

ところが、仕事にはそれぞれ「その仕事をしていそうな人」のイメージがついて回る。鳶職なら、高い場所を軽々と移動する人。大工なら、重い材木や道具を扱う人。運送業なら、荷物を持ち上げ、長時間ハンドルを握る人。そこから、丈夫そうな体、腕や肩の太さ、日に焼けた肌、短髪、作業着といった外見までひとまとめにされるようになった。「ガテン系の男」という言葉が生まれると、職業そのものを知らなくても、「現場で体を動かしていそうな男」という姿が思い浮かぶようになったわけだ。

この変化はゲイ文化と非常に相性がよかった。日本のゲイ文化には昔から、「どんな男性が好みか」をかなり細かく言葉で分ける習慣がある。筋肉質な男性なら「マッチョ」、太くがっしりした体なら「ガチムチ」、ひげや体毛があり大柄なら「熊系」、少し年上で頼れる雰囲気なら「兄貴系」といった具合である。2000年代初めのゲイ向けインターネット案内書でも、すでに体形による分類と並んで、「ユニフォーム・作業着」「鳶」などがフェチの対象として扱われていた。ガテン系は、体形と服装と職業イメージが重なる場所に生まれたタイプだったのである。

なぜ「働いてできた体」に色気を感じるのか

ガテン系の魅力を理解するには、筋肉そのものだけを見ても分かりにくい。たとえば、トレーニングジムで体を鍛えている男性を考えてみよう。左右のバランスが取れた胸や肩、腹筋まできれいに見える体は、それ自体が一つの美しさを持っている。一方、ガテン系に求められてきたのは、必ずしもそういう完成された体ではない。

肩や背中だけ妙に厚い。腕が太い。腹筋は割れていなくても体全体ががっしりしている。日焼けしている。手が大きく、少し荒れている。服装もスポーツウェアではなく、ツナギや作業ズボンである。そこには、「見せるために鍛えたのではなく、仕事をしていたらこういう体になった」という物語が生まれる。実際にその人がどんな仕事をしているのかは、必ずしも重要ではない。「毎日重い物を持っていそう」「外で働いていそう」「細かいことを気にしなさそう」と見る側が想像できれば、それだけでガテン系らしさは成立する。

この点で、ガテン系は単なる肉体美とは少し違う。ゲイ雑誌『G-men』は1995年に創刊され、細身の美青年よりも、筋肉質で男っぽい男性や、いわゆる「ガテン系」を強く扱った雑誌として知られている。1998年4月号では、実際に「特集・ガテン系」が組まれていた。『ガテン』創刊からわずか7年後である。この時点で、一般社会では「現場仕事の人」を表していた新しい言葉が、ゲイ雑誌ではすでに「こんな男が好き」という意味を持っていたことになる。

そこで重要なのは、ガテン系の魅力が「職人という職業への憧れ」だけではなかったことだ。会社員なら、スーツを着て、身だしなみを整え、会社という組織の中で働く姿が思い浮かぶ。それに対してガテン系の男性には、外で汗をかき、自分の体と技術で仕事をしている姿が重ねられた。シャツの襟をきれいに整えた男性ではなく、首にタオルを巻いた男。パソコンの前に座る人ではなく、工具を手にしている男。そうした分かりやすい対比が、「男らしさ」を強調する記号として使われたのである。

掲示板に見える「ガテン好き」の具体的な感覚

雑誌だけを読んでいると、編集者が作った流行だったのではないかとも思える。しかし、実際のゲイ向け掲示板を読むと、一般の利用者の間でもガテン系がかなり具体的な好みとして理解されていたことが分かる。2011年、ゲイ向け掲示板「ハッテンナビ」には、そのまま「ガテン系」という題名のスレッドが立てられている。投稿者が探していたのは、単に筋肉質な男性が集まる場所ではなかった。「ツナギや作業着」を着たまま利用できる場所や、ガテン系の男性と知り合える場所を尋ねていた。返信でも、作業着などのユニフォームを好む人向けの場所が話題になっている。

ここを見ると、ガテン系のポイントがよく分かる。裸になってしまえば、筋肉質な男性とガテン系男性の違いは小さくなる。ところが作業着を着た瞬間、「この人は現場で働いている男かもしれない」という背景が生まれる。服そのものが、その男性の仕事や日常まで想像させるのである。

2012年には、さらに直接的な「鳶と盛れるハッテン場」というスレッドも立てられた。そこでは、鳶職の服装で参加するイベントについての話や、「鳶、板金屋、防水工、型枠大工、解体」など、実際の職種名が並ぶ投稿が見られる。興味深いのは、同じ掲示板の中ですでに「本物の職人」と「職人の格好をした人」が区別されていたことである。2011年の投稿にも「コスプレガテン」という表現が出てくる。

ここまで来ると、「ガテン系」という言葉は完全に職業から独立し始めている。実際に建築現場で働いていなくても、短髪で体格がよく、作業着や鳶服を着れば「ガテン系」に見える。その姿に魅力を感じる人がいるなら、「本物の職業」と「性的なイメージ」は別々に存在できる。これは警察官や消防士の制服にひかれる人が、必ずしもその職業そのものに恋をしているわけではないのと似ている。

ガテン系の場合は、それがもっと日常に近かった。街中を歩いていれば、本物の職人や配送員、設備業者を普通に見かけることができる。その現実の男性像と、雑誌やAVで作られたイメージが、かなり近い距離で重なっていたのである。

AVが作った「現場の兄貴」という分かりやすい人物像

ガテン系というイメージを最も分かりやすい形にしたのが、ゲイ向けAVや成人向け作品だった。実際の作品タイトルを並べるだけでも、その特徴が見えてくる。サムソンビデオは2007年に『兄貴はガテン系』を発売しているし、ほかにも『ガテン魂見参!!』『ガテン野郎』など、「ガテン」という言葉を前面に出した作品が2000年代を通じて作られてきた。

ここで使われている「兄貴」と「ガテン」という二つの言葉は、かなり相性がいい。「兄貴」は、単に年上という意味ではない。少し年上で、体が大きく、頼りがいがあり、細かいことを気にしない男というイメージを含む。それに現場労働者のイメージを加えることで、「無骨で男らしい働く男」という人物像を、タイトルだけで作ることができる。

こうした作品では、現実の職人をそのまま記録することより、「職人らしさ」を分かりやすく強めることが大切になる。きれいな新品の作業着より、少し使い込んだ服。細身よりも太い首や腕。長い髪より短髪。都会的で洗練された雰囲気より、ぶっきらぼうで口数の少ない印象。一つ一つは現実の職人すべてに当てはまる特徴ではないが、これらを組み合わせれば、見る側はすぐ「ガテン系だ」と理解できる。

AVや成人向け漫画では、仕事場や現場の休憩時間、作業後の更衣室、寮や宿舎といった舞台が使われることもある。これは単なる背景ではない。そうした場所を見せることで、「この男たちは普段から体を使って働いている」という物語が一瞬で伝わるからだ。作業着や工具、汚れた手袋、資材置き場のような小道具も同じ役割を持つ。露骨な場面そのものより前に、まず「働く男たちの世界」を作り、その世界に色気を感じさせるのである。

そのため、ガテン系AVでは出演者個人の名前よりも、「職人」「兄貴」「現場野郎」といったタイプのほうが前に出ることが多い。誰が出ているか以上に、「どんな男が出ている作品なのか」が重要なのである。この点は、ガテン系が一人のスターではなく、一つの完成されたキャラクターとして定着していったことをよく表している。

1991年に『ガテン』が創刊されたとき、そこに性的な意味はなかった。建築、運送、整備などの仕事をまとめ、働き方を紹介するための言葉だった。ところが、その仕事から連想される身体や服装に魅力を感じる人たちが「ガテン系」という言葉を使い始めた。ゲイ雑誌がそれを特集し、掲示板では「ガテン好き」が交流し、AVでは「現場の兄貴」という人物像が繰り返し作られていった。

そこで好まれていたのは、単なる筋肉ではない。朝から現場に出て、作業着を汚し、体を使って一日働いた男。その太い腕や日焼けした肌を見て、「この体は毎日の仕事でできたのだろう」と想像する。現実の職人そのものというより、そこから広がる生活や仕事の物語まで含めて魅力を感じる。それが、ゲイ文化でいう「ガテン系」の一番分かりやすい姿なのである。

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