日本には、「ゲイ」「ホモ」「おかま」「オネエ」など、男性同性愛者を表す言葉がいくつかあります。これらの言葉は、テレビや雑誌、映画などのメディアを通じて広まり、現在でも一般的に使われてきました。中には差別や偏見を伴う言葉とされるものもあります。
この記事では、それぞれの言葉がどのように生まれ、どのような歴史を持ち、どのように使われてきたのかを紹介します。
1. ゲイ
「ゲイ」の語源は英語の「gay」に由来します。「gay」は、もともと「陽気な」「楽しい」という意味の言葉です。しかし、20世紀初頭、英語圏で同性愛者を指すスラングとして使われ始めました。その後、1970年代頃から、LGBTコミュニティが「ゲイ」を積極的に使用して、自分たちのアイデンティティを表すポジティブな言葉に変えていきました。
日本では、1980~1990年代にかけて「ゲイ」という言葉が一般的に広まりました。特に1990年代には、雑誌や映画の影響で認知度が高まり、ポジティブな意味合いを持つ言葉として定着します。1999年にはダグ・リーマン監督のオムニバス映画『GO!』が公開され、その中で日本のゲイ文化と、ゲイの苦悩や葛藤がリアルに描かれました。「ゲイ」という言葉が一般層に浸透するきっかけとなった映画です。
また、バラエティ番組でも、ゲイタレントが登場する機会が増えていきます。マツコ・デラックスは作家の中村うさぎと親交を深めたことがきっかけでメディアに露出するようになり、『5時に夢中!』(TOKYO MX)へ出演した2009年頃からお茶の間の人気者になります。また、ドラァグクイーンのミッツ・マングローブも、マツコと同時期に『5時に夢中!』への出演がきっかけで評判となりました。
2. ホモ
「ホモ」という言葉は、英語の「homosexual(ホモセクシュアル)」の省略です。海外では医学用語としても使われることがあります。
日本では長らく「ホモ」が蔑称として使われてきました。特に1970~1990年代にかけて、バラエティ番組や漫画では「ホモネタ」が多用され、ゲイを笑いの対象とする文化が広まりました。フジテレビのバラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげです』内のコントでは、とんねるずの石橋貴明が「保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)」を演じ、男性に絡むコミカルなキャラとして人気を博しました。しかし、社会の風潮が変わったことで、同性愛者への差別を助長するなどの批判を受け、封印されました。
一方、1980年代にはゲイ雑誌『薔薇族』の中で、「ホモ」という言葉が積極的に使用されました。差別的な言葉をあえて使うことで、ゲイとしてのアイデンティティを確立しようとする試みの一環だったと考えられます。しかし、2000年代以降、ゲイコミュニティ内でも「ホモ」という言葉は避けられる傾向にあります。特に若い世代は、侮蔑的な響きを持つ「ホモ」ではなく、「ゲイ」を好んで使用します。

保毛尾田保毛男は、特徴的な青ひげを生やし、オネエ言葉を話すキャラクターだったよね。僕が小学生の頃に流行ったけど、僕自身がゲイだったから、クラスで保毛尾田保毛男が話題になるのが凄く嫌だった。

2017年9月28日放送の『とんねるずのみなさんのおかげでした』30周年スペシャルで、石橋貴明が保毛尾田保毛男を再演したら、案の定、LGBTQ+団体や視聴者から批判が殺到した。結局、フジテレビと石橋貴明が謝罪して、保毛尾田保毛男は封印されることになったんだ。

フジテレビはトラブルに対する予防措置も事後対応も下手糞だよね。最近だと、中居正広の性加害トラブルへのずさんな対応が印象的だ。2025年現在、フジテレビのスポンサーだった企業の多くがCMの放映を見合わせていて、フジテレビの経営がピンチだけど、以前からずっと、そんなことを繰り返してきたんだよね。
3. おかま
「おかま」という言葉の語源には諸説ありますが、一説には江戸時代の男性芸者や陰間茶屋(男娼がいる茶屋)で使われていた隠語に由来するとされます。もともとは女装をする男性を指しましたが、後にゲイ全般を指す言葉として使われるようになりました。
1990年代には、「おかまキャラ」としてバラエティ番組に登場するタレントが増え、「おかま」は笑いの対象とされました。前述の『とんねるずのみなさんのおかげです』も、こうした笑いを世間に広めた番組の一つです。
しかし、LGBTQ+の権利が認識され始めると、「おかま」という言葉が問題視されるようになりました。近年では、ゲイ自身が「おかま」を使う場合もありますが、一般的には差別的と捉えられる可能性がある言葉とされます。
4. オネエ
「オネエ」は、女性的な言動や口調の男性を指す言葉として使われてきました。しかし、テレビなどのメディアによって、「オネエ=男性同性愛者」というイメージが強調され、それが現在のイメージを形成しています。
1980~90年代の日本では、バラエティ番組で「オネエキャラ」タレントの出演が増えました。美輪明宏やIKKO、マツコ・デラックス、ミッツ・マングローブなどが代表です。オネエ口調に毒舌を交えたトークが人気を博しました。
一方、これらの番組の視聴者が「ゲイ=オネエ」というイメージを持つことに対して、ゲイコミュニティ内からの批判もあります。たとえば、「バラエティ番組に出るゲイタレントが限られたキャラしかいないことで、多様性が損なわれる」と主張されます。また、ゲイの多くは女性的な言動をするわけではなく、「オネエ」で一括りにされることを決して好みません。
「オネエ」という言葉は、親しみを込めた表現として使われることがある一方、文脈によっては差別や偏見につながることもあります。
5. ニューハーフ
「ニューハーフ」という言葉は1980年代に日本で生まれました。英語の「new(新しい)」と「half(半分)」を組み合わせた造語です。1970~1980年代にかけて、男性から女性へ性転換した人々を指す言葉として使われ始めました。このように、もともとはトランスジェンダー女性を指す言葉として使われていましたが、ゲイを指す言葉として誤って使われることもあります。
1990年代、日本のテレビ番組には、はるな愛やIKKO、椿姫彩菜などの「ニューハーフタレント」が多く登場しました。これを受けて「ニューハーフパブ」や「ニューハーフショー」が全国に広まり、観光客向けのエンターテイメントとしても人気を集めました。
2010年代以降、LGBTQ+に関する理解が進む中で、「ニューハーフ」という言葉がトランスジェンダー女性に対して不適切であると指摘されるようになります。現在では、トランスジェンダー女性を表す言葉として「トランスジェンダー女性(MtF)」「トランス女性」が一般的です。
6. 同性愛者
「同性愛者」という言葉は、学術的な文脈でよく用いられます。この言葉は、英語の「homosexual(ホモセクシュアル)」を直訳したもので、日本では明治時代以降に医学や心理学の分野で使われ始めました。
日本の法律や政策に関する議論では、「同性婚の合法化」や「同性愛者の人権保護」などの表現がなされます。2015年には東京都渋谷区が日本で初めて「同性カップルにパートナーシップ証明書を発行する条例」を制定し、この際の報道で「同性愛者」という言葉が頻繁に使用されました。
一方、日常会話では、「同性愛者」というとやや硬い印象を与えるため、あまり使われません。
7. 男娼
「男娼」という言葉の語源は、「男」と「娼」の組み合わせです。「娼」は「売春を行う人」「性行為を提供する職業」を表します。そのため、「男娼」という言葉は、男性が他者に性的サービスを提供する職業や行為を指し、基本的にはネガティブな意味合いを含みます。ゲイが経済的理由や社会的な孤立から性サービスを提供する場合、その背景には複雑な社会的要因があります。
マンガやドラマ、映画などに男娼が登場する場合、そのキャラクターが困難な立場にあることや、社会的に拒絶される存在であることが強調されがちです。男娼をテーマとする作品では、売春がもたらす悲劇や、男性が売春に従事することによる心情の変化、社会との対立などがテーマとして描かれます。

この記事では、男性同性愛者を表す言葉をいくつか紹介したけど、中には差別的な言葉もあるから、使い方には十分注意しないといけない。だからといって、過剰に「差別だ!」と騒ぐと、言葉狩りにつながって、過去に作られた名作が封印されちゃったりするから、それは避けたいところだね。



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