男子大学生がゲイについて意識し始める
「なあ、おまえって男なのに、ほんと色白だよな」
隣りの席の男子が急に私の腕を触ってきた。
「しかもさ、ツルツルしてるんじゃね?」
「やめろって、気持ち悪いだろ!」
私は言いながら、男子の手を振り払うように腕を動かした。
自分の肌が人と違うことは昔から気にしていた。体毛がほとんどなく、肌荒れもせず、綺麗な肌だ。高校2年生になっても変わらないどころか、むしろ、肌がどんどん女性的になっていくようだった。
肌だけではない。自分の体に違和感があった。周囲の男子は次第に声変わりをし、体格もがっしりしていく。そんな中、私だけ声は高く、ほっそりとした体形で、男らしさとは無縁だった。取り残されているような感覚があった。体育の授業で着替えるとき、男子の体つきが視界に入ると、嫌でも自分との差を意識せずにはいられなかった。
私が初めてゲイについて意識し始めたのは、大学生になってからだ。大学の合格祝いに親にパソコンを買ってもらい、本格的にインターネットをするようになって、自分の体について調べ始めた。自分と似たような悩みを抱える男性が日本全国にいることを知って、ホッとした。そして、彼らの中には、男性が好きな男性もいることがわかり、ちょっと驚いた。
――私も女性よりも男性の方が好きかも……。
私の肌をジロジロ見てきた男子や、触ってきた男子、「可愛い」と言いながら抱き着いてきた男子もいたけれど、私は嫌ではなかった。口では「やめろ」「気持悪い」と言いながらも、内心では嬉しかったような気すらする。
――他の男子とは違った自分の肌や体は、ゲイとして生きていくのに便利なように、神様が授けてくれたものなのかな?
そう考え始めると、本格的にゲイの世界に足を踏み入れたくなった。せっかくパソコンもあるのだから、ゲイ専用の出会い掲示板に書き込んでみた。加工したとはいえ、顔写真を公開することに抵抗があった。連絡を取った相手に個人情報を知らせるのも怖い。でも、好奇心には抗えなかった。
年上の男性から女性ホルモンを勧められる
メールで何人かとやり取りした後、リアルで会うことにしたのが諸橋さんだ。メールの文面が丁寧で、安心感があった。実際、諸橋さんは私より10歳以上も年上だという。不安がないこともなかったけれど、街中の喫茶店で待ち合わせをする約束をした。
諸橋さんは、メールの文面通りの丁寧な人柄でありながらも、子供っぽい面も持ち合わせていた。IT系の仕事をしていて、開発に関する知識や技術が豊富だ。自分の興味のあることについて、目を輝かせながら、「最近の流行りはね」といろいろ話してくれる。私にはよくわからない話ばかりだけれど、一緒にいると不思議と落ち着けた。喫茶店で過ごした2時間があっという間だった。
その後も諸橋さんと連絡を取り合った。大人の余裕と子供の好奇心を併せ持つ諸橋さんに私は惹かれていく。
3回目に会ったとき、私たちはセックスをした。諸橋さんの毛深くて、筋肉質で、男らしい肉体の抱かれ、組み伏され、太くて立派なペニスをアナルに挿入された。初めてで痛かった。諸橋さんは私を気遣って言う。
「痛いならやめるよ」
「ううん……続けて……」
「本当に大丈夫?」
「うん……」
「じゃあ、このまま中で出すよ」
諸橋さんは激しく腰を振り、私の前立腺をガンガン突き上げ、挿入したまま射精した。
その後、2人でシャワーを浴びた。諸橋さんは私の肛門に指を入れて、念入りに精液をかき出してくれた。私の中では、指先の刺激で初体験の痛みが増していった。でも、「これは大事な通過儀礼」と自分に言い聞かせながら、諸橋さんに身を委ねた。
私たちは会うたびにセックスした。諸橋さんは相変わらず好奇心旺盛で、初めてのプレイや新しいおもちゃをいつも試したがる。そんなある日、諸橋さんが目を輝かせながら私に言った。
「これをちょっと試してみない?」
「試すって、それ何?」
「女性ホルモン」
「女性ホルモン?」
「女性の卵巣から分泌されるホルモンで、エストロゲンとプロゲステロンっていう2種類があって……」
「女性ホルモンの名前を聞きたいんじゃなくて、それを男が使ったら、副作用とかあるんじゃないか、気になったんだよ」
「ほんの少しだけなら大丈夫。もっと綺麗な肌になるよ」
私は最初、冗談だと思った。でも、諸橋さんは女性ホルモンにやたらと詳しく、熱を込めて説明する。
「これは水性ジェルで、飲み薬ほど強くないんだ。女性が体調を整える程度のものだから、絶対に大丈夫」
「大丈夫って、何が?」
「いや、だから、チンコが小さくなるとか、そういう副作用はないってこと」
「……わかった。……試してみるよ」
私は諸橋さんのことが好きだし、何よりその子供っぽい表情が愛おしくて、つい流されてしまった。
私が試したのは、皮膚に塗るジェルタイプのものだ。経口薬よりも穏やかに作用し、体に負担が少ないという。しかし、使い始めると、私の体に変化が表れ始めた。
女性ホルモンをやめても体は元に戻らない
大学の食堂で、友人と一緒に昼食を食べていたときのことだ。
「おまえ、最近変わったよな?」
友人は私をまじまじと見つめながら言う。
「変わったって、何が?」
「いや……何ていうか……おまえの胸、膨らんでないか?」
彼は私の顔から下に視線を落とした後、慌てて目を逸らした。彼の顔が薄っすらと赤くなっている。
彼に言われてハッとした。最近は胸が膨らみ、お尻も大きくなり、ウエストもくびれてきた。ズボンのサイズが合わなくなっていた。肌はさらに綺麗になり、体毛もどんどん薄くなっていく。以前よりも感情が不安定な日が多くなり、涙もろくなり、ちょっとしたことで気分が揺れ動く。何よりも性欲は減退した。
そんな私の変化を諸橋さんは楽しんでいた。
「すごいな、前よりも、もっと、もっと女の子みたいになってるよ」
「女性ホルモンを使っても副作用はないって言ったよね?」
「体の変化は副作用じゃないだろ?むしろ、綺麗になって、可愛くなって、良いことばかりだ」
「そんなこと言われても……」
私は口ごもった。反論したい気持ちはあった。
でも、諸橋さんは私の見た目を褒めてくれるし、ますます優しくなっていった。特に、私の膨らんだおっぱいを揉んで、吸って、乳首を軽く噛むのが大好きらしく、「この胸、大好き」と何度も口にする。
だから、私は女性ホルモンの使用をやめられなかった。やめて元の体型に戻ったら、諸橋さんの愛情が失われると思ったから。
ある日、私は鏡の前に立って、自分の体を見ながら焦った。
――このままだと引き返せなくなる。
よくやく女性ホルモンをやめる決心をした。でも、やめてもすぐに男性としての体に戻るわけではなかった。胸の膨らみも、お尻の大きさも、ウエストのくびれも、そのままだ。感情の不安定さも解消せず、いわゆる「男らしさ」を取り戻せなかった。
「そっか……。女性ホルモンをやめるのか……」
諸橋さんは、私が女性ホルモンをやめることに対して、何も言わなかった。ただ、私に対する愛情は冷めたようだ。会う回数は徐々に減っていった。セックスのときも、諸橋さんは私のアナルを犯しながら別のことを考えているようだった。性欲処理だけを目的に、私をオナホか何かだと思っていたのだろう。
しばらく経って諸橋さんの転勤が決まり、私たちは別れることになった。本当に転勤だったのかどうかも怪しいけれど、そんなことはもうどうでもよかった。諸橋さんの気持ちは既に離れていて、私たちが会う理由もセックスする理由もない。
私に残されたのは、女体化したままの体だけだ。しかも、ペニスはほとんど勃起せず、射精できなくなった。男性的な性欲も失われ、自慰で快感を得られない。アナルが性器になったみたいで、前立腺を激しく突き上げられることでしかイケなくなった。
――こんな私を愛してくれる人はいるのか?
――大学卒業後、まともな職に就けるのか?
――帰省したとき、家族に何をどう伝えればいいのか?
感情が不安定な日々の中で、頭の中を嫌な考えばかりがグルグル渦巻いている。

この体験談に出てくる諸橋さんって、「私」が好きだったんじゃなくて、「私」が女体化していくのが好きだったんじゃないかな?だから、女性ホルモンをやめた「私」とあっさり別れたんだろうね。

諸橋さんは身勝手な男だわ。でも、世の中にはこういう男がいっぱいいると思うの。特に、私のような、男なのか女なのかわからない性別の人間の周りには、そんなのばかりが寄って来る。

「私」は、諸橋さんに愛されたいがために女性ホルモンを使い始めたけど、そういう安易な気持ちで自分の肉体に関することを決めちゃダメだ。

私も、女性ホルモンを投与するかどうか、豊胸するかどうか、ペニスを切除するかどうか、いろいろ悩んでるけど、誰かのためじゃなく、自分のために全部決めていくつもりよ。




コメント