相部屋の同級生が実はゲイだった
俺が通う高校は全寮制の男子校だ。1年のとき、俺はユウキと相部屋になった。
「おい、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
夕食後の静かな寮の部屋で、俺はベッドに腰掛け、向かいのベッドに座るユウキに声をかけた。
「何?」
ユウキはいつものように穏やかな笑顔で俺を見上げた。
「このAV女優、知ってるか?」
俺はスマホの画面をユウキに向け、ある女優の画像を見せた。
「う~ん、知らないなあ。初めて見た」
ユウキは画面に目を向けた後、首を傾げる。
「え、マジで?誰もが知ってる超有名人だぞ?」
「本当に知らないんだって。俺、そういうの、あんまり興味ないし」
ユウキは少し困ったように笑った。
「まさか、おまえ、ゲイなのか?」
俺はジョークのつもりだった。しかし、ユウキの表情は固まった。
「……どうして……そう思うの?」
少し震えるユウキの声。
「いや、何ていうか、その……男なら誰でも知ってるような女優を知らないなんて……ありえないだろ?」
俺はユウキの反応に戸惑っていた。言葉が上手く出てこない。
重苦しい沈黙が二人にのしかかってきた。
最初に口を開いたのはユウキだった。
「実は、俺、ゲイなんだ。誰にも言ってないんだけど、おまえにだけは言っておく」
静かな口調だったが、覚悟が滲んでいた。
驚きで言葉を失った俺。
――まさか、相部屋のユウキがゲイだったなんて……。
しかし、何か言わないと気まずい。とっさに出てきたのは謝罪のセリフだった。
「すまん……。悪かったな、変なこと聞いて……」
ユウキの表情が軟らかくなった。しかし、その目には鋭い光が宿っている。
「ううん、別に気にしないで。でも、このことは誰にも言わないでほしい」
「わかった。約束する」
俺は鋭い光としっかり向き合って、答えた。

ゲイに手コキされて射精してしまう
俺はユウキがゲイであることに戸惑った。ゲイと一緒に寝泊まりすることに嫌悪感もあった。
でも、学年も部活も同じユウキと過ごしていると、俺に対するユウキの気遣いがひしひしと伝わってくる。俺が寝てしまった後に俺のユニフォームを洗濯してくれたり、自分の道具と一緒に俺の道具も手入れしてくれたり、ストレッチやマッサージに付き合ってくれたり……。
ユウキは本当に優しくて、気の利く奴だ。もしかしたら、俺の内心を見透かしていて、俺に不安を与えないように気を利かせていたのかもしれない。
ユウキと過ごすうちに、俺の中でゲイに対する偏見が溶けていった。
そんなとき、事件が起きた。
俺はコロナワクチンの副反応で高熱を出し、部屋で寝込んでいた。39度後半の熱で頭はクラクラし、何もできなかった。
「大丈夫?何か欲しいものある?」
ユウキは心配そうに俺の額に手を当てた。
「……ああ、ありがとう。……でも、何もいらない。ただ、しんどい……」
弱々しい声で答える俺。
「わかった。何かあったら、すぐに言ってね」
ユウキは優しく微笑んだ。
その日は一日中、ユウキが俺の看病をしてくれた。
ユウキは、汗だくの俺のために、着替えを持ってきてくれた。このとき、俺の意識は朦朧としていたけれど、ユウキが着替えさせてくれたことや汗拭きシートで体を拭いてくれたことをぼんやりと覚えている。
そして、もう一つ、記憶の片隅に残っていた出来事があった。
着替えのとき、俺は勃起していた。数日オナニーしていなかったから、たまっていたんだと思う。
そんな俺にユウキが言った。
「手でしてあげるよ」
俺は首を横に振った。でも、勃起は治まらない。
ユウキが何か言いながら、俺のペニスを握った。
俺は拒否しようとしたが、体が思うように動かない。他人にしごかれるのが初めてで、気持ち良さもあったと思う。結局、ユウキが耳元で囁く声を聞きながら、ユウキの手の中で出してしまった。
翌日、俺はユウキに手コキされたことを思い出した。一度は「悪い夢を見ていた」と自分に言い聞かせて忘れようとした。でも、忘れようとすればするほど、気持ち悪い妄想が膨らんでいく。
ユウキに問いただすことにした。
枕の下に隠されていた洗濯物のパンツ
「……ごめん。……気持ち悪かったよね」
ユウキは申し訳なさそうにうつむいた。
「やっぱり……おまえ……」
言葉に詰まる俺。
「……ごめん。……本当にごめん」
ユウキは謝罪の言葉をくり返す。今にも泣きだしそうだった。
「なんで、そんなことしたんだよ!」
俺の怒りが爆発した。ユウキを殴りそうになるのをグッとこらえた。嫌悪感が渦巻く。
「……だって……その……苦しそうだったし……気持ちよさそうだったから……」
ユウキは泣きながら言った。
「な、何だよ、気持ちよさそうって?ふざけるな!」
「……ごめん……ごめん……」
声を荒げる俺と、謝り続けるユウキ。
ふと俺の視界に飛び込んできたのは、ユウキのベッドの枕――その下からはみ出している黒い布だった。俺はユウキを突き飛ばし、その布を取り出すと――。
「これ……どういうことだよ……?」
全身を駆け巡る不快な感情とともに言葉を吐き出した。俺の手にあるのは、昨日俺が穿いていたパンツだった。
「……そ、それは……洗濯しようと思って……。で、でも……忘れてたんだ」
ユウキは弁解した。目からポロポロ涙をこぼしながら。
「嘘つけっ!どうして俺のパンツだけおまえのベッドにあるんだよっ!気持ち悪いっ!」
俺はユウキを睨みつける。
――ユウキは俺のパンツで興奮したのか?これを使ってオナニーしたりしたのか?
想像しただけで気分が悪くなり、ユウキの姿が歪んでいくようだった。
「……ごめん……ごめん……」
ユウキは「ごめん」を繰り返しながら泣き崩れた。
俺は部屋を飛び出した。今日は授業も部活も欠席だから、行き場もなく、誰も来ない校舎の裏で時間を潰した。
夕方、俺に部屋に戻った。しばらくして、ユウキも戻って来た。
俺はユウキを無視し、ユウキも何も言わない。
沈黙が続く中、俺は校舎の裏で考えたことをユウキに伝える決意をした。
「ユウキ、俺は寮長に相談しようと思う」
ユウキの顔が青ざめていく。
「そ、それだけは……やめて……」
「何でだよ?お前がやったことは、許されることじゃない!」
俺はユウキを睨みつけた。
「お願い……。誰にも言わないで……。俺には……ここしかないんだ……」
ユウキは泣きながら土下座した。
俺の心が揺れ動く。
――俺はユウキがゲイでも信頼していた。それなのに、俺の初体験を奪いやがって……
――昨日、俺がはっきりと拒否しなかったから、ユウキを勘違いさせちゃったのかもしれない。ユウキが俺をずっと好きだったんなら、その気持ちを踏みにじるのは、ちょっと違う気がする。
――俺のパンツを隠し持っているなんて、気持ち悪すぎる。今までもずっと、俺の洗濯物で……。泣きたいのはこっちだよ。寮長に全て話そう。
――いや、待てよ。俺が寮長に相談したら、ユウキは性犯罪者扱いになるかも……
いろんな考えが浮かんでは消え、消えては浮かび、なかなか結論は出ない。ふと、俺が寮長に相談しているシーンを思い描いた。ユウキに手コキされて射精したことを赤裸々に語る俺の姿――。
――無理だ。寮長には相談できない。
自己中心的な結論だ。でも、これで俺もユウキも傷付かないなら、間違った結論ではない。
「わかった。今回だけは許してやる。でも、次、同じようなことがあったら、絶対に許さない」
俺はきつい口調で言って、ユウキから目を逸らした。
「……ありがとう……ありがとう……」
ユウキは土下座したままだった。その体が小刻みに震えていた。
今回の出来事が俺とユウキの関係をどう変えていくのか、まだわからない。でも、もう一度だけユウキを信じてみようと思った。

ユウキのやったことは卑怯だし、絶対に許されない行為だ。少し前、男が女に暴行する目的で、女が食べたり飲んだりするものに睡眠薬なんかを入れて、女の意識を奪う手口が話題になったよな。ユウキの行為も似たようなもので、「俺」の意識が朦朧としてるのに付け込んで性的なことをしたんだから、性犯罪っていわれても文句は言えない。

確かにそうなんだけど、狭い空間で一緒に寝起きしてたら、ムラムラして、良からぬことを考えちゃうのは、珍しくないと思うよ。ユウキに味方する気はないけど、この話と似たようなトラブルは、あちこちの学校で起こってるんじゃないかな?学校側も、トラブルが起こる前提で対策しないといけないのかもしれない。





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